あの家に暮らす四人の女
退屈な日々こそ、かけがえのないもの
「あの家に暮らす四人の女」/三浦しをん
「あの家に暮らす四人の女」は、
阿佐ヶ谷から徒歩20分ほどにある
古い洋館が舞台のお話。
主人公とその母の生活に
友人二人が加わり、
女4人で暮らしている。
4人の生活に謎があるのか
これから大事件が起こるのか
と期待して読んでいくと・・・
そうゆう感じじゃない。
かといって何もないわけでもない。
私が過ごしているような日常。
朝起きてご飯作って食べて寝て
仕事や家事、趣味などの時間を
過ごしている中で
たまにちょっとした事件がある。
もめごとに巻き込まれたり、
家の調子が悪くなったり、
過去を振り返ったり、
素敵な人に出会ったり・・・
と、色々起こるんだけど
日々は流れていく。
そんな4人の日常を追ってくと
将来に漠然とした不安を抱えていても
今ってそんなに悪くないし、
まあ将来も何とかなるかなと
思わせてくれる。
自分の居場所は退屈なものだと
思って、どこかほかのところへ
行きたい、他の世界を見てみたいと
思ったりするけど
それは、快適な場所にいるから
考えちゃうんだな。
理想に届かなくても
平穏に生活をしていけるって幸せだ。
それから、この作品にはカラスとか河童が
結構大事な登場人(鳥?生?)物として
出てくるなど、ちょっぴりSFな要素が
盛り込まれているのだけど
ファンタジーを全く受け付けない私でも
こんなことがあったら良いな~
と思わせてくれる魅力があった。
読み進めながら、春に亡くなった
祖父を思い出した。
亡くなる1年ちょっと前まで
毎日ほぼ同じタイムスケジュールで
1人の生活を維持していた祖父。
たまに美術館に出かけたりはするものの
基本的には、本や新聞、スポーツ中継を
見ながら家の中で過ごしている祖父を見て
何を思って暮らしてるのだろうと
感じたことがあった。
でも、この作品を読んで
祖父は同じ日々を守り続けることが
幸せだったのではないかと思えた。
そして、残された私たちは
どうしたって悲しいけど、
祖父がずっと見守って
居てくれると思えてちょっと笑えた。
そうそう、おととい主を失った
祖父の家を掃除していたときのこと。
ダイニングの椅子の上に立って
天井近くの壁についた油汚れを
雑巾で拭いていたら、
グラッと椅子が傾いて落ちそうになった。
危ない!と思った瞬間、
椅子はバランスを持ち直して
落下せずにすんだ。
その時、これはおじいちゃんが助けて
くれたに違いないと思ったのだけど
「あの家に暮らす四人の女」を読んで
あれはやっぱりおじいちゃんが守って
くれたんだと確信した(笑)
・・・そう信じることで
気持ちが晴れたから
そうゆうことに決めた!
写真は、祖父の家の庭に実っていた梅。
主がいなくなっても、実るんだなと
思って、梅雨入り前に収穫して
梅酒を作っている。
(正確には、途中まで私が作業して
仕上げや管理は母が・・・)
祖父の一周忌に飲めるといいな。
きっと祖父は、ちゃんと梅酒が
出来上がるか、気をもんでいるはず。
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