帰りたいのに帰れない辛さを知る「郷里松島への長き旅路」/西村京太郎
松島を旅行することになったので、この作品を選んでみた。
新幹線移動だし、やっぱり西村京太郎サスペンス!!!
と、ゆるっと選んだのだけど、忘れられない一冊になった。
「郷里松島への長き旅路」は、震災後の奥松島をフリーライターが訪ねるシーンからはじまる。
被災地の風景を眺める中で、津波で流されたあと、ようやく元の場所に戻された墓石に目を止める。
そして、墓地の中で、他の墓石から離れたところにぽつんと置かれた、ひときわ大きな墓石が気になり、調べ始めることに。
フリーライターは、十津川警部の力も借りながら、墓石の持ち主が、戦争中のある出来事がきっかけにより、大きな墓石を立て、その後、村に住めなくなってしまったことを突き止める。
「郷里松島への長き旅路」のタイトル通り、墓石の持ち主による、ものすごい長い旅路が描かれている。
故郷に戻れなくなってしまった人の悲しみを、戦中戦後の出来事を通して描いているのだけど、災害によって故郷を失った人たちにも、思いをはせずには読み進められない。
あれから、8年経った今も、大切な人との思い出が詰まった故郷に戻れない辛さを抱えた人がたくさんいることに、改めて気づかせてくれた。
3月のこの時期に、読むのにオススメだな。
写真は、松島の日の出。
美しかった。
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